市場からの帰り道。
てくてく歩いていたら、途中でくたびれてしまった。
オートリキシャの修理屋の前で、オイルにまみれた手を動かすオトコがいた。
休憩がてら、そばにしゃがんでその様子を眺める。
インドは、人懐っこくてお喋りな人が多い。
好奇心旺盛で、何にでも興味を示す。
だが、このオトコは、日本人がそばにいることなど、まるで気にも留めない様子で、黙々と手を動かし続ける。

「何やってんの?」
のんびりとタバコを吸いながら、話しかけてみた。
「ブレーキの修理さ。コレがオレの仕事なんだ。」
メカニックか。
素晴らしい仕事だな。
そう伝えると、男は照れくさそうに笑った。
ポツリ、ポツリと交わす言葉。
その仕草や表情、話し方から、気の優しいオトコだと伝わってくる。
ボクが知っているインド商人にはいないタイプの人間だ。
タバコの煙が、大きなインドの空に溶けていく。
一日中、何かと慌ただしい仕入れ旅。
時が止まったかのような、そんな時間がとても好きだ。
タバコ一本分の会話を楽しみながら写真を撮り、最後に別れを告げる。
そしてゆっくりと立ち上がり、ボクはまた歩き出した。
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