初めてインドに足を踏み入れた時の印象は強烈だった。
空港を出た瞬間、街のカオスに飲み込まれ、目の前に広がる人々のパワーに圧倒されて、手も足も出ない自分を感じた。
当時はネットもスマホもなく、頼れるのは自分の勘だけ。風向きや人の流れを肌で感じながら、街を歩いた。
写真は、そんなインドで路地裏に迷い込み偶然見つけたカーゴ屋で撮ったものだ。
この事務所には、インド中から集められた荷物が集まり、すべて日本へ向けて発送される。
そこには、1人のネパール人の男がいた。
テキパキと荷物を捌き、誇りを持って仕事をする姿が印象的で、ボクは彼が大好きだ。
ある午後、チャイを飲みながら、男と雑談をした。
特に構えるわけではなく、時間があったので椅子に座り、自然に会話が始まった。
「ところで、なんでここで働いているんだい?」
男は語り始める。
「オレは3歳くらいの時、母親と一緒にネパールからデリーに買い物に来たんだ。祭りの時期だったかな。そしてはぐれてしまった。」
当時のことは、本人も覚えている限り慎重に、ゆっくりと話す。
「この人混みの中、母親もオレを見つけられなかった。小さかったから住所も覚えていないし、路頭に迷いそうになったところを、ここのボスに拾ってもらったんだ。」
その後も母親と会うことはなかったが、仕事があり、食べるものもあり、寝る場所もある。
「今は十分満足でハッピーだ」と笑顔でチャイを啜る。

インドでは、こうした人生を背負った人々に出会うことが少なくない。
ボクはただ、「いいボスに拾ってもらえてラッキーだったな」と応じた。
男は窓の外に視線を外し、少し寂しそうに笑った。
今でもインドに行くと、必ずこのカーゴ屋に顔を出す。
「よう!ガネーシャ!!いつ来たんだ?元気そうだな!」
20年変わらず迎えてくれる笑顔がそこにはある。
またこの男と、のんびりチャイを飲める日が来ることを願いつつも、「また会える」という保証はどこにもない。
それを一番よく知っているのは、彼自身なのだ。
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