「インド綿」や「エスニック生地」として親しまれているブロックプリント。
素朴で温かみのある布が、どのようにインドの工房で染められているかご存じですか?
これはインド・ラジャスタン地方で、今も職人が一枚ずつ手作業で仕上げる伝統工芸です。
この記事では、エスニック雑貨を28年にわたって現地で仕入れてきたボクが、インドのブロックプリントの世界を現地レポート付きでご紹介。
有名な産地「サンガネール」と「バグルー」の違いから、染色の工程。
さらに生地が日本に届くまでのリアルな裏側まで、たっぷりお届けします。
読めばきっと、あなたの“布の見方”がちょっと変わるかもしれません。
インドのブロックプリントの基本をまとめた記事もあります。あわせてどうぞ。
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ブロックプリントとは?インド綿として親しまれる伝統工芸

ブロックプリントとは、インドの職人が木版を使って布に模様を押し重ねる染色技法です。
手作業ならではの「温かみ・ゆらぎ・一点物の魅力」があり、日本では「インド綿」や「エスニック生地」として長く愛されています。
特徴をまとめると以下の通りです。
・布の種類:コットン(インド綿)が中心
・模様の作り方:木版(ブロック)を一色ずつ重ね押しする
・デザイン:花柄や幾何学模様など多彩
・魅力:機械には出せない手仕事の風合い、一点ごとに違う表情
・用途:ベッドカバー、マルチクロス、洋服、インテリア
つまりブロックプリントは、ただの「布」ではなく、職人の手で仕上げられる世界で一つの工芸品なのです。
ブロックプリント工房と職人の技

工房では、職人が代々受け継いだ技を使いながら布を染めています。
木版づくりからプリント工程まで、現場でしか見られない手仕事の魅力を掘り下げます。
伝統的なハンド・ブロックプリントと現代プリントの違い
ブロック(木版)を布に押して模様を作ることから「ブロックプリント」と呼ばれます。
工程をすべて手作業で行う場合は「ハンド・ブロックプリント」とも呼ばれます。
しかし近年は、シルクスクリーンや大量生産のプリント生地も「ブロックプリント」として流通。
伝統的な本物のハンド・ブロックプリントを求める場合は注意が必要です。
木版職人が生み出す精緻な模様

工房では、職人が木槌でコンコンと小気味良い音を響かせながら木版を彫ります。
出来上がった木版は緻密で繊細。人の手で彫ったとは信じられないほど精巧です。

インドのブロックプリントが世界を魅了する理由
こうして作られた布は、インドでしか生み出せないハンドクラフト。
その正確で温かみある風合いは世界中のバイヤーを惹きつけ、サンガネールやバグルーといった村から今も世界中へ送り出されています。
サンガネールのブロックプリントの特徴

サンガネールは「華やかで繊細なデザイン」で知られる一大産地です。
化学染料を使った鮮やかな色彩や西洋的なボタニカル柄など、その特徴を具体的に見ていきましょう。
化学染料を用いた華やかな色彩
サンガネールのブロックプリントは、真っ白な布をベースに化学染料で模様を染めるのが特徴です。
西洋的で繊細なボタニカルデザイン
フラワープリントや小花柄など、繊細で西洋的なボタニカルデザインが多く見られます。
華やかで都会的な雰囲気を持ち、モダンなインテリアやファッションにもよく合います。
サンガネール村への行き方とアクセス方法
サンガネールは「ピンクシティ」と呼ばれるジャイプール郊外に位置し、市内から車で30分ほどでアクセス可能。
ジャイプール観光とあわせて立ち寄りやすい点が魅力です。
観光の動線に組み込みやすい場所と言えます。
実際に現地での仕入れはどうなのか?修羅場レポートはこちら。
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バグルーのブロックプリントの特徴
対照的にバグルーは、自然染料を使った素朴で力強いデザインが魅力の産地です。
伝統技法やGI認証にも支えられた、バグルーならではの価値を紹介します。
自然染料による素朴で落ち着いた色合い
バグルーのブロックプリントは自然染料を用い、落ち着いた色合いと素朴な風合いが魅力です。
線の太い大胆なパターンが多く、昔ながらの「これぞブロックプリント」と言える雰囲気を色濃く残しています。
伝統技法「ダブ(Dabu)」と地理的表示(GI)認証
伝統技法「ダブ(Dabu)」による泥防染も健在で、GI(地理的表示)認証を受けるなど正統派の地位を確立しています。
太く大胆な伝統的パター
デザイン面においては線の太い大胆なブロックパターンが多く見受けられ、古き良き伝統を守っているのが特徴です。

バグルー村への行き方とアクセス方法
バグルーはジャイプール市内から西へ約30km、車で1時間程度の場所にあります。
工房は点在しているため、訪れる際は事前に場所を確認するか、車をチャーターするのが安心です。
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サンガネールとバグルーの違いまとめ
・繊細で華やかな柄を求めるなら サンガネール
・素朴で力強い伝統柄を好むなら バグルー
どちらも布を染め上げる手間や時間は変わらず、それぞれに根強いファンがいます。
好みに合わせて選べるのも、インドのブロックプリントの魅力です。
職人が染めたブロックプリントは、日本でも手に入ります。
マルチカバーやテーブルクロスとして使えるインド綿はこちら。
ブロックプリント職人の技と制作工程

実際の工房では、熟練の職人が感覚だけを頼りに模様を重ねる高度な作業を行っています。
量産できない希少性こそが価値を高めています。
職人が一枚一枚手作業で仕上げる布の染色工程
バグルーの工房では、幅1.5メートル・長さ10メートルほどの布をベースに、色ごとに分けられたブロック(木版)を何度も重ねて染めていきます。
布には一切の目印がなく、職人の感覚と経験だけを頼りに模様を重ねる高度な作業です。
熟練職人になるまでの道のりと生産量の限界
一人前になるには3〜5年。
熟練の職人でも1日に仕上げられるのは3枚(約30メートル)程度。
メンズ長袖シャツに換算すると15〜20枚分しか作れません。
この効率の低さこそが、ブロックプリントの希少価値を高めています。
工房に並ぶ多彩な木版

工房の壁には数え切れないほどのブロック(木版)が並んでいます。
職人はその中から版を選び、布の上に模様を押し重ねていきます。
こうして仕上げられたブロックプリントの生地を、ボクのようなエスニック雑貨バイヤーが買い付けます。
「インド綿」や「インド更紗」としてマルチカバーやベッドカバーに仕立てるほか、素材として縫製工場に持ち込み、シャツやワンピースなど洋服に仕立てることも仕事の一環です。
ブロックプリントを染める実際の映像
これはボクが訪れたハンドブロック工房で撮影したものです。
工房では、熟練の職人が木版を布に押し当て、模様をひとつずつ重ねていきます。
間近でその作業を見ていると、何を目印に押しているのか全く分からないほど正確無比。
職人に尋ねても「ここを見るんだ」と指を示してくれるのですが、素人目には理解できない。
それほどまでに高度で感覚的な技術なのです。
版を押す音は軽やかでリズミカル。
まるでダンスのような手さばきで、布の上に次々と模様が現れていきます。
こうした作業は、一朝一夕で身につけられるものではありません。
ブロックプリントの熟練職人だけが持つ魔法のような技術であり、実際に現場を目にするとその凄みが直感的に伝わってきます。
インドはタイやネパールに比べて仕入れのハードルが高く、こうした工房の内部に入れる日本人バイヤーはごくわずか。
その現場に立ち会えるのは、長年培った経験と信頼関係があるからこそです。
ジャイプールでブロックプリントを買うなら

ブロックプリントの一大産地であるサンガネールやバグルーに近いジャイプールは、布探しに最適な街です。
市場を歩けば、多彩なブロックプリント生地に出会えるだけでなく、世界中のバイヤーが集まる活気ある買い付けの現場を体感できます。
ジャイプールの市場での買い物の魅力
市内の市場やショップには大小さまざまな店舗が並び、ブロックプリント生地が豊富に揃っています。
世界中のバイヤーもここを訪れ、布を買い付けて洋服やインテリア製品へと仕立てています。
「現地で選んで買う」体験こそが、ブロックプリントの魅力を最大限に感じられる瞬間です。
天然藍染の価格と価値
ジャイプールでは、一般的なブロックプリント生地だけでなく、天然の藍染めを使った高級品も目にすることができます。
天然藍で染められた布は色合いに深みがあり、時間とともに風合いが増すのが特徴。
その分価格も高く、通常のブロックプリントの2倍以上になることも珍しくありません。
一見すると高価に感じますが、天然染料ならではの魅力と、長く使える耐久性を考えれば十分に価値のある一枚です。
市場で人気の雑貨も、日本から通販で手に入ります。
バッグやポーチなど、ブロックプリント雑貨はこちら。
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まとめ|インドのブロックプリントの奥深さ

インドのブロックプリントは、職人が一枚ずつ心を込めて染め上げる伝統工芸です。
サンガネールの繊細で華やかな柄、バグルーの素朴で力強いデザイン。
どちらも時間と技術を惜しみなく注ぎ込んだ世界でひとつだけの布です。
大量生産の布とは違い、使うほどに風合いが増し、生活の中に温もりを添えてくれるのです。
その背景を知ることで、手にした瞬間の喜びや愛着も格別なものになるでしょう。
今度、ブロックプリントの布に出会ったら、ただの「インド綿」としてではなく、職人の想いが込められた一点物として手に取ってみてください。
きっとその瞬間、日常の中にインドの風と工房の風景が広がり、布の見方が変わるはずです。
実際にインドで買えるお土産をチェックしたい方はこちらの記事へ。
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