ブロックプリントはインドの伝統技法で日本でもエスニック雑貨店などで実際に目にする機会が多い布です。
しかしその現場となると一体どのような技法で布を染めているのか目にした事がある人は殆どいません。
もちろんボクの様なエスニックバイヤーのプロでさえブロックプリントの現場に足を踏み入れた事がある人は極わずか。
今回はブロックプリント本場ラジャスタン地方の「バグルー」と「サンガネール」と言う沢山の工房が集まる村に足を運びブロックプリントの現場をレポートします。
インドのブロックプリント(Block Print)とは
エスニックな雰囲気を手軽に味わえる生地として世界中から愛されているブロックプリント。
主にインドの西。ラジャスタン地方に古くから伝わる布を染める伝統技法です。
「ブロックプリント」と聞くと耳慣れない言葉かもしれませんが「インド綿」や「インド更紗」と言い換えるとご存じの方も多いのではないでしょうか。
木版職人により驚くほど緻密に彫られた木版を人間の手でいくつも重ね様々な色や柄を生み出して行くブロックプリント。
染め上がる現場を目の当たりにするとまるで魔法を見ているかのようです。
今回はインドのブロックプリントで有名な二大産地「サンガネール」と「バグルー」のいくつかの工房を訪ねてみました。
ブロックプリントの木版を彫る職人
こちらが実際にブロックプリント工房で使われているブロック(木版)です。
なぜブロックプリントと呼ばれるのか?
文字通りこのブロック(木版)を使いプリントすることからそう呼ばれています。
また「ブロックプリント」以外にもその工程が全て人の手によることから「ハンド・ブロックプリント」と呼ばれることもあります。
最近では時代なのかハンドブ・ロックプリントだけではなくシルクスクリーンや大量生産のプリントのブロックプリントが出回っています。
伝統的な本物のハンド・ブロックプリントをお探しの方は十分注意して下さい。
こちらが実際にブロック(木版)を彫っている職人です。
側で見ているとコンコンコンと小気味良い音を響かせながら掘り進んでいます。
しかし掘り出されるブロック(木版)は繊細な線と緻密な作画によりとても人の手で彫られたものとは思えない程です。
ブロックプリントに代表されるインドのテキスタイルはその驚くほど正確な手仕事から他を寄せ付けない圧倒的な魅力があります。
それはインドでしか作れないハンドクラフトとなり世界中からバイヤーが引き寄せられるようにサンガネールやバグルーに集まって来ます。
そしてバイヤーが買い付けたブロックプリントの生地はサンガネールやバグルーと言った小さな村から世界中に送り出されるのです。
サンガネールのブロックプリントの特徴
サンガネールのブロックプリントの特徴はベースとなる真っ白い生地に化学染料を使いプリントする点にあります。
またデザイン面においてもフラワープリントに代表されるような華やかで繊細な線のブロックプリントを見ることが出来ます。
デザイン的にはボタニカルな小花柄など西洋的なイメージの物が多い印象です。
ナチュラルな染料を使い古くから伝わるデザインの素朴なブロックパターンを守るバグルーのブロックプリントとは対照的と言っても良いかも知れません。
サンガネール村(Sanganer)の場所
サンガネールはピンクシティと呼ばれるジャイプール郊外にあり比較的アクセスは簡単です。
ボクはジャイプールからサンガネールへ向かいバグルに立ち寄りそのまま西へ向かいプシュカルへ抜けるルートを取ったので今回は車をチャーターしました。
バグルーのブロックプリントの特徴
バグルー村のブロックプリントの特徴はナチュラルな自然の染料を使う点です。
またナチュラルな染料で染められたブロックプリントはそのほとんどがバグルー産です。
デザイン面においては古くから伝わる線の太い大胆なブロックパターンが多く見受けられます。
真っ白な布をべースに版を重ねるサンガネールとは違い古き良き伝統を守っているのがバグルーのブロックプリントの位置付けです。
バグルーとサンガネールのブロックプリント。
どちらが優れているとか劣っていると言う話ではなくて布を染め上げるのに費やされる時間と手間は変わりません。
繊細で西洋的な細かい柄を好むのであればサンガネール。
昔ながらの「これぞブロックプリント」と言うような線の太い大胆なデザインであればバグルーと言ったところでしょうか。
バグルー(Bagru)村の場所
ジャイプール市内からから西へ約30キロ。車で1時間程度で到着します。
バグルー村の工房はそれぞれ距離があるためやはりジャイプールから車をチャーターし事前に工房の場所を調べてから向かうことをオススメします。
ブロックプリントが生み出される現場
画像はバグルーの比較的大きめの工房です。
幅1.5メートル。長さ10メートル程の布をベースに色ごとに分けられたブロック(木版)を重ねていきます。
何の目印も付いていない布にブロックプリントを幾重にも重ねて行く訳ですから一長一短で出来る物ではありません。
時間と経験を経てブロックプリント職人となります。
一人前のブロックプリント職人になるまではカンの良い人でも3年から5年ほどかかるそうです。
またご覧の通り全てが手作業となるためベテランのブロックプリント職人でさえ1日に染め上げる生地の量は3枚が限界。
つまりブロックプリント職人が1日掛かりで染め上げられる布は30メートル。
これはおよそメンズの長袖シャツに換算するとサイズにもよりますが15枚〜20枚程度しか作ることが出来ません。
工房の壁には幾つあるのか分からないほどのブロック(木版)が置いてありました。
この中から版を選び現場の職人の手によってブロックプリントの生地が染め上がります。
それをボクのようなエスニック雑貨バイヤーが買付け「インド綿」や「インド更紗」と呼びマルチカバーやベッドカバーとして販売します。
しかし「インドの布」として販売するだけではありません。
あくまでも素材の生地として買付けそれを縫製工場に持ち込みシャツやワンピースなどの洋服に仕立て上げるのもボクらエスニック雑貨屋の仕事です。
ブロックプリントを染める実際の映像
実際にブロックプリントの判を押している職人の動画です。
一体何を目印に押しているのか間近で見ていても見当がつきません。
何度も聞いて確認して「ここを見るんだよ」と教えてもらってもまるで分からず魔法を見ているようでした。
正確無比でかつ軽やかな手さばきは正にブロックプリントの熟練職人です。
こうした現場に足を踏み入れるエスニックバイヤーは日本でも一握り。
インドはタイやネパールと違い「仕入れに入る」と言うだけでハードルはかなり高め。
旅の難易度が遥かに高い国なのです。
その国を自由に泳ぎ回りこうして現場に立つことが出来る日本人バイヤーはほとんどいません。
インドでブロックプリントを買うならどこがオススメか?
インドまで折角来たのだから現地で本物のブロックプリント生地を買いたいと言う方には断然ジャイプールをオススメします。
サンガネールもバグルーも近いことからブロックプリントは自然とジャイプールに集まります。
ジャイプール市内では大小様々なブロックプリントの生地屋を目にすることが出来るでしょう。
上記画像の男が手にしているような天然の藍染になると価格はグンと上がり通常のブロックプリント生地の倍以上することも珍しくありません。
インドのブロックプリントまとめ
インドの伝統技法のひとつであるブロックプリント。
その生地は日本でもエスニック雑貨店などで簡単に目にすることが出来ます。
それでも「どうやって染められているか?」
現地に足を運び目にした人はエスニック雑貨屋でもほとんどいません。
ブロックプリント生地の商品を扱うエスニック雑貨屋としては今後も現地を訪ねてその様子を書いて行きたいと思っています。
是非お近くのエスニック雑貨店や当店にて奥深いインドのブロックプリントの世界に触れてみて下さい。
古来からインドに脈々と受け継がれ今も残る伝統技法であるブロックプリントの良さを感じていただければ嬉しいです。
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