タイの冷蔵庫に潜む白い悪魔
晩酌のお代わり攻撃に氷が出来るスピードが追いつかなくなって来ていた。
いつかやろうと思いながらついつい面倒で先延ばしにしていた問題と対峙することにした。
「霜」だ。
ワンドア冷蔵庫に取り付く白い悪魔。
ボクは今戦いを挑もうとしている。そんなビューティフルサンデー。
先ずは検索。目からウロコの冷凍庫の霜取り方法!
短時間で簡単にこの白い悪魔を退治する方法は無いものかと検索してみたところ流石世の中は広い。賢い人と言うのはいるものだ。
冷凍庫の中にお湯の張ったボウルを突っ込めと記してあるページに目が止まった。
つまりはボウル本体は愚かお湯から発生する熱い水蒸気で庫内を暖めろと言うことらしい。
なるほど!である。
もしかすると権威ある学者が名を伏せ世の中に放った価値のある論文かも知れないが真偽の程は定かではない。
意を決し冷蔵庫の中身を取り出す。
無論おでん用に「タコ」と間違って買った「イカ」もだ。ついでに腐ってしまえバカヤロー。
早速冷凍庫の霜取りをやってみた
熱湯を注いだボールをヤツに気付かれない様にそっと入れる。
あたかも「こちらも凍らせていただいてよろしいかしら?」の体である。
エクソシストに聖水を振りかけられた如く白い悪魔は身を溶かしうごめき始める。
白い悪霊バズズよ去れ!
ボクはそう念じながら熱湯を張ったフライパンで追撃する。
悪霊バズズよ!今すぐ去るのだ!!
何度か熱湯を入れ替え様子を伺っていると白い悪魔は簡単に退散したかに見えた。
だが相手は悪魔である。最後まで気を抜いてはいけない。
注意深く庫内を観察するとやはりである。
白い悪魔は去った様に見せかけ冷凍庫の裏側にそっと息を潜め取り憑いていた。
こんなところにまで!
若干の驚きと共にメラメラと闘志が湧いてくる。
絶対!絶対にだ。ここからオマエを追い出してやる!!
熱湯はまるで神が与えし聖水のごとく悪霊を追い払う
熱々のフライパンとお湯を張ったボウルで挟み逃げ場を塞ぎ攻め立てる。
これには流石の白い悪魔も透明の体液を滴らせなす術もない。
メリッ
小さな断末魔が聞こえたその刹那ガラガラと音を立ててついにヤツは去った。
こちらがその白い悪魔の正体である。
見るも無惨な姿ではあるが心臓の弱い方。
またはトイレが近く尿漏れの恐れがある方などは閲覧を控えて欲しい。
またこの様な悪魔祓いの儀式を執り行う際は近隣のエクソシスト。
または経験豊富な私までご依頼いただきたい。
素人が見よう見まねで執り行うと思わぬ事態を招きかねない。
霜取りは悪魔祓いの儀式のごとく
例えばである。
あなたが男性でせっかちな性格が災いし先を急ぐばかり冷蔵庫を傷つけ破損させてしまった場合のことを想像してみてはいかがだろうか?
悪魔より怖い「鬼」が目の前に立ちはだかることは想像に難くない。
そうなってしまったら最後。あなたの人としての全てが地に落ちることになる。
私は冷蔵庫に食材を戻し静かにドアを閉めコンセントを元の位置に差し込んだ。
ブーンと言う低いモーター音と共に安堵が訪れる。
ヤツは去ったのだ。程なく氷は出来上がるだろう。
床に飛び散った悪魔が残した断末魔を拭き取りだらしなく溶け排水溝に消えていくいく亡骸を私はただ見つめている。
冷凍室に巣食う白い悪魔よ。またいつか戦う時が来るまでさらばだ。
それは遠くない未来に必ずやってくる事を私は知っている。
-完-