「エスニック雑貨バイヤー」と聞くと、海外に仕事で行けて楽しそう。
そんなイメージを持つ人が多いでしょう。
確かにパスポートひとつで誰でも始められます。
ですが、現実はまったく甘くありません。
納期は守られず、言葉は通じず、トラブルは日常茶飯事。
それでも帳尻を合わせ、日本に商品を届ける。
それがエスニック雑貨バイヤーの仕事です。
28年間この仕事を続けてきた私が、そのリアルと覚悟についてお話しします。
エスニック雑貨バイヤーと言う仕事とは?
エスニック雑貨バイヤーの仕事は、主にアジア各国に足を運び、日本には無い商品を探し出すこと。
あるいは、現地でオリジナル商品を作り、買い付けて日本に送る。
一言で言えば、そんな仕事です。
特別な資格は必要ありません。
パスポートさえあれば、誰でもエスニック雑貨バイヤーを名乗れます。
日本で「エスニックファッション」として流通している商品の多くは、実はタイで作られています。
今は昔と違い、初心者バイヤーでも仕事が出来る環境が整っています。
市場も仕入れ先もある程度決まっており、情報もネットでも手に入る。
多くのエスニック雑貨店にとって、タイでの仕入れがスタート地点です。
回る市場はほぼ決まっているため、最初は「ルート営業的な仕入れ」といったイメージになります。
バンコクに来て、タイ料理と冷たいビール。
そしてマッサージを楽しみ、市場で仕入れ。
正直、この段階まではむちゃくちゃ簡単です。
英語もほとんど必要ありません。
売りたい側と買いたい側なので、電卓一丁とカタコト英語で事足ります。
ここまでは、誰でも出来ちゃいます。
エスニック雑貨バイヤーに必要なのはバイタリティ
ここまで読むと、エスニック雑貨バイヤーは簡単な仕事に見えるかもしれません。
ですが実際は、入り口は広いが、奥がとても深い仕事です。
ルート営業的な仕入れから始まり、ウキウキでタイに通っているうちは、まだまだヒヨッコ。
パスポートと電卓一丁で誰でも出来るのは、ここまでです。
他所の店を見て「売れていそうな商品」を真似して仕入れる。
この段階で止まっているバイヤーは非常に多いです。
それはもうバイヤーとは呼べず、ただのコピー屋です。
「他所と同じじゃつまらない」
「もっと面白いものを仕入れたい」
そう思い始めたバイヤーだけが、次のステージへ進みます。
タイでよく聞く言葉がマイペンライ(問題ない)
インドでよく聞く言葉がノープロブレム(問題ない)
仕入れの最中、何度も耳にしますが、現場は毎日問題だらけなんです(泣)
約束した納期に行っても、出来上がっていることはまずありません。
出来上がっていたら、逆にこちらが驚くレベルです。
怒鳴ったところで「来週には出来るから」と笑顔で言われちゃう。
納期って何だ?
そう思った瞬間、文化と価値観の違いに直面します。
バイヤーとして試される瞬間
どうしても意図が伝わらず、モヤモヤが溜まる。
ここで初めて、外国と仕事をするという意味を思い知ります。
そしてこの先に必要なのは、語学力でも、知識でもありません。
人としてのバイタリティです。
何があっても、どうにか帳尻を合わせる。
最終的に形にして、日本に商品を届ける。
その手腕が問われ始めるのが、この段階。
ここがエスニック雑貨バイヤーとしてプロの一歩を踏み出す瞬間です。
以前の記事でバイヤーにより店の個性が決まること。
そしてそれには「いくつかの種類」があることを書きました。
エスニック雑貨バイヤー国別の仕入れの難易度
タイ|難易度:低(スタートライン)
エスニック雑貨バイヤーの多くが、最初に向かう国がタイです。
・チャトチャックマーケット
・プラトゥナームマーケット
・ボーベーマーケット
・中華街ヤワラー/サンペンレーン
・インド人街パフラット
・チェンマイ(モン族市場)
この6ヶ所を回れば「エスニック」と聞いて多くの人が連想する商品は、ほぼ揃います。
日本で流通しているエスニックファッションや雑貨の大半は、タイ製です。
世界中のバイヤーが集まるため、仕入れに必要なサービスも充実。
・通訳
・仕入れアテンダント
・国際宅急便
といったサービスも充実しています。
現金を持って市場を回り、仕入れて送る。
誰でも簡単にエスニック雑貨バイヤーを名乗れる国です。
逆に言えば、タイで仕事が出来なければ、他の国ではまず無理。
ここがスタートラインです。
エスニック雑貨バイヤーとして、最低限押さえて置かなければならないバンコク市内の5つの市場について書いています。
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ネパール|難易度:中(次の一手)
タイで仕入れを続けていると、秋冬物が揃わないことに気付きます。
そこで向かうのがネパールです。
・ウール製品
・厚手のジャケット
といった秋冬物が充実しています。
仕入れは首都カトマンドゥのタメル地区に集中しており、徒歩で回れる規模感。
タイに次いで、仕入れは比較的簡単な国。
現在は日本の佐川急便やアテンドサービスもあります。
人も真面目で優しく、仕事相手として申し分ありません。
日本食も多く、納豆まで食べられます。
ベトナム|難易度:中(通貨が厄介)
ベトナムも回る市場が決まっているので比較的仕入れは簡単です。
ホーチミンのベンタイン市場やハノイのドンスアン市場などが有名です。
しかし「ベトナムドン」と言う分かり辛い通貨の単位が少々厄介。
1ベトナムドンは0.005円と非常に細かいのです。
1万円を両替すると今日のレートで1,991,051ベトナムドンになって返ってきます。
ダメですよねこれ?もう訳が分かりません(笑)
バリ島|難易度:中〜高(送料の壁)
バリ雑貨も日本ではお馴染みかと思います。
小さな島なのでこちらも仕入れは比較的楽。
しかしバリも通貨単位がややこしいことで有名です。
1ルピアは0.0079円
嫌な感じしませんか?(笑)
1万円を両替すると1,261,358ルピアになります。
商品代金は合計468,000ルピアです!と言われましても・・・
ぇ。ぇーと?( ꒪⌓꒪)←こうなるヤツですよね(笑)
それとバリ島は日本へ荷物を送る送料が高いこととしても有名です。
ある程度の量を仕入れ、海上コンテナを使うぐらいじゃないと仕入先としては小口の雑貨屋には不向きです。
インド|難易度:最難関
はい。インドです。
国名が出た時点で、遊びは終わり。
インドは、エスニック雑貨バイヤーにとって最大の難関です。
まず、だだっ広い国土。
街から街へ移動するだけで、丸一日潰れるのは当たり前。
移動中に何が起きるか分からないので、水・クラッカー・リンゴなどの非常食を常に持ち歩く。
身体が資本の雑貨バイヤー、これはインド仕入れの鉄則です。
移動だけで、すでに苦行なのです。
気温45度を超える真夏のラジャスタンを移動した時のこと。
「エアコン付き」のハズが何故か「エアコン無し」
移動時間は9時間です。
もう仕事どころではなくたどり着くだけで精一杯でした。
タイのようにトゥクトゥクで市場を回り、夜はマッサージからの冷えたビール。
そんな世界は、インドには存在しません。
そして悪名高いインド英語。
インド人独特のRをすべて発音する、早口の巻き舌英語。
初めて耳にした時は、英語に聞こえず本気で戸惑いました。
仕入れはもちろん、移動・交渉・トラブル対応、インド英語が理解できないと詰みます。
さらに、インド商人の押しの強さと粘り。
来る日も来る日も、一切引かない相手と交渉し続ける。
劣悪な衛生環境。
正直、心も体も削られます。
インドで仕入れをするというのは、相当な覚悟と、絶対にへこたれないメンタルが無いと不可能。
エスニック雑貨バイヤーとして、インドに入れるのは選ばれた人間だけ。
それくらい、別格の難易度です。
インドの仕入れで起こるトラブルについても書いています。
これからバイヤーとしてインドを目指す方は必読です(笑)
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エスニック雑貨バイヤーになりたいあなたへ
ウェルカムです!ボクは常に仲間を歓迎します。
特別な資格は必要ありません。
パスポートひとつで、誰でも始められる仕事です。
ただし10年後の生存率はかなり低いです。
10年後に残っている人はごくわずか。
理由は単純で、仕入れても売れなければ続けられないからです。
実店舗でも、ネットショップでも、エスニック雑貨バイヤーとしてとても大事なことがあります。
それは、好きな物と売れる物は違うという現実。
自分の好きな物が売れるようになるには、時間と実績が必要です。
いくつもの修羅場をくぐり抜け、店の看板に重みが出てから、ようやく評価される。
「あの人が仕入れた物なら間違いない」
そう言ってもらえて、初めてプロのエスニック雑貨バイヤーとして一人前です。
横ばかり気になって、他所の店舗で売れてるものと同じ商品を仕入れる。
「物と金」だけを見て、誰よりも安く、誰よりも早く売る。
それが、今のエスニックファッションや雑貨をつまらなくしている最大の原因です。
つまりボクらバイヤー自身が、自分の首を絞めています。
ボクがまだバイヤーとして海を超える前。
エスニック雑貨屋は何が出てくるか分からないオモチャ箱でした。
どこのお店も個性的な品揃えで、バイヤーでもある店主が話してくれる現地の様子。
商品と一緒に語られるストーリーに想像を膨らませながら買い物を楽しんだものです。

10年残っても、安売りしか出来ない店なら、それは「物とお金の交換」しかしてこなかった証拠。
ただのルート営業的仕入れ。
正直、子供の使いと大差ありません。
それでも、エスニック雑貨バイヤーを目指すという物好きな方がいたら。
タイで。
ネパールで。
インドの路地裏で。
一杯やりながら、情報交換しましょう。
ボクは、聞かれたことはすべて答えてきました。
仕入先も、やり方も、隠しません。
真似されたこともあります。
裏切られたこともあります。
それでも続けてきたのは、教えたところで、簡単には真似できない。
そういう自負があるからです。
最後にもう一度言わせて下さい。
エスニック雑貨バイヤーを目指すあなたへ。
ボクはいつでもウェルカムです!常に仲間を歓迎します!!
エスニック雑貨バイヤー必読の2冊
エスニック雑貨バイヤーの仕事について書かれた本は、ほとんどありません。
今回紹介する2冊は古い本ですが、「エスニック雑貨バイヤーとは、どういう仕事なのか」
基本の基を知ることが出来る、貴重な本です。
いつか自分も、海外で仕入れをしながら生きていきたい。
そんな夢を持っている方には、ぜひ読んでほしい。
ボク自身、何度も何度も読み返してきた2冊です。
アジア雑貨仕入旅/仲屋むげん堂
エスニック雑貨屋の偉大な先人。
ご存知「仲屋むげん堂」のバイヤーである「シマさん」と「ドカさん」そして「ムラサさん」の仕入れ旅にスポットを当てた良書です。
タイ・インド・香港・インドネシアなどの仕入れ旅の様子がリアルに描かれています。
特に「インドの仕入れ旅」について触れている本はこの一冊以外ボクは知りません。
1990年発行と古い本ですが、インドの仕入れ事情は今でも大きく変わっていません。
エスニック雑貨バイヤーとしての過酷な仕入れ旅の空気感が、しっかり伝わってくる一冊です。
アジア雑貨屋さんの仕入れ術/やまだひろなが
こちらは、タイの仕入れ旅に焦点を当てた一冊です。
タイは、エスニック雑貨バイヤー初心者の登竜門。
この本では、バンコクだけでなく、チェンマイやタイ北部の仕入れについても触れられています。
仕入先の住所なども掲載されていますが、1998年発行のため、その点は参考程度。
最初に訪れる国として、タイを知るために読んでおく価値のある一冊です。
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